抜けている立ち方もありますが、後ほど個々に立ち方を解説していきたいと思います。
松涛館空手の
基本の立ち方
完全ガイド
正しい立ち方は、すべての技の礎。12種類の基本の立ち方を徹底解説。
空手道において「立ち方(たちかた)」は、すべての技術の基盤です。どれだけ鋭い突きや蹴りを習得しても、正しい立ち方が身についていなければ、技に威力も安定性も生まれません。
松涛館流(しょうとうかんりゅう)は1938年に船越義珍(ふなこし ぎちん)師範によって確立された流派で、現在世界で最も広く普及している空手流派のひとつです。その基本の立ち方は、実戦性・安定性・移動性の三つをバランスよく追求したものです。
本記事では、松涛館流が定める12の基本の立ち方を、姿勢・足幅・重心のポイントとともに丁寧に解説します。初心者から上級者まで、今一度立ち方の原点に立ち返るための一助となれば幸いです。
礼法で用いる「気をつけ」の立ち方。かかとを揃えてつけ、つま先を約45度外側に開く。体重は両足に均等にかける。稽古の開始・終了時に必ず用いられる、空手道の礼節の象徴ともいえる立ち方です。
ポイント
- かかとをぴったりつける
- つま先を左右45度ずつ外向きに開く
- 背筋を真っすぐ伸ばす
- 重心は両足均等・足全体で支える
- あごを引き、視線は正面
両足を肩幅に開き、つま先を正面(平行)に向ける立ち方。安定感と自然な構えを両立しており、準備動作や移行の際によく用いられます。重心は腰に落とし、膝は軽く曲げます。
ポイント
- 足幅は肩幅に合わせる
- 両足のつま先を正面(平行)に向ける
- 膝を自然に曲げ、腰を落とす
- 重心は両足均等
- 上体は真っすぐ、重心安定
「八」の字のようにつま先を外側に開いた自然な立ち方。人間が最もリラックスした状態で立つときの姿勢に近く、「自然体」とも呼ばれます。足幅は肩幅程度で、つま先を約30〜45度外側に向けます。組手の基本的な構えにも通じる姿勢です。
ポイント
- 足幅は肩幅程度
- つま先を約30〜45度外側に向ける
- 膝を軽く緩め、腰は自然な高さ
- 全身リラックスした「自然体」
- 多くの型の開始姿勢として使用
八字立ちとは逆に、つま先を内側に向けた立ち方。「逆八字立ち」とも呼ばれます。股関節を内旋させることで下半身を引き締め、特定の型や準備動作で使われます。足幅は肩幅程度、つま先はやや内向きに揃えます。
ポイント
- 足幅は肩幅程度
- つま先をやや内側に向ける
- 膝が内側に向かないよう注意
- 下半身を引き締める意識
- 重心は低め、安定感を高める
松涛館流で最も多用される立ち方のひとつ。前足に約70%の体重をかけ、膝をしっかり曲げて前方へ踏み込みます。前足の膝はつま先の延長上に置き、後ろ足は膝を伸ばして床に押しつける感覚で支えます。突き・蹴りなどの攻撃技に最適な立ち方です。
ポイント
- 前後の足幅は肩幅の2〜2.5倍
- 前膝をしっかり曲げ、つま先の延長上に
- 後ろ足の膝はピンと伸ばす
- 体重配分:前足70%、後ろ足30%
- 腰の向きは正面(正整列)または45度斜め
- 上体は真っすぐ立てる
前屈立ちとは逆に、体重の約70%を後ろ足にかける防御的な立ち方。相手の攻撃をかわしながら、前足による蹴り技(前蹴りなど)に素早く移行できる体勢です。後ろ足の膝は深く曲げ、前足は膝を軽く曲げてつま先を正面に向けます。
ポイント
- 前後の足幅は肩幅の約2倍
- 後ろ足の膝を深く曲げ腰を落とす
- 前足は膝を軽く曲げ、つま先を前に向ける
- 体重配分:後ろ足70%、前足30%
- 腰の向きは前後軸に対して約45度
- 前足による蹴りへ素早く移行可能
馬にまたがるような形で両膝を大きく曲げ、腰を落とした左右対称の立ち方。鍛錬と安定性を高める立ち方として基本稽古で多用されます。足幅は肩幅の約2倍、足の外側が平行になるようにつま先は正面を向け、膝はつま先の方向に向けて押し開く感覚が重要です。
ポイント
- 足幅は肩幅の約2倍
- 両足のつま先を正面(平行)に向ける
- 膝を大きく曲げ、外側に張り出す
- 腰を深く落とし、地面に根を張る感覚
- 重心は両足に均等・腰の高さを保つ
- 上体は真っすぐ、前傾しない
猫が前足を軽く触れさせているように、前足に体重をほとんどかけない立ち方。後ろ足の膝を深く曲げて腰を落とし、前足はつま先のみを床に軽く接地します。体重の約90%を後ろ足に乗せ、前足はすぐに蹴りや移動に使える「軽さ」を保ちます。
ポイント
- 体重の約90%を後ろ足に乗せる
- 後ろ足の膝を深く曲げ、腰を低く保つ
- 前足はつま先のみ、軽く触れる程度
- 前後の間隔は肩幅程度
- 前足をいつでも蹴りに使えるよう準備
相撲の四股踏みに由来する立ち方で、騎馬立ちに似ていますが、つま先を大きく外側(約45度)に向けるのが特徴です。股関節の柔軟性と強靱な下半身が求められ、腰を深く落とすことで安定性が増します。「慈恩(じおん)」「十手(じって)」などの型で使用されます。
ポイント
- 足幅は肩幅の2倍程度
- つま先を約45度外側に向ける
- 膝を深く曲げ、つま先方向に押し開く
- 腰を深く落とし、背筋を垂直に保つ
- 騎馬立ちより股関節の柔軟性が必要
「半月」の型(kata)で用いることから名付けられた立ち方。前屈立ちと後屈立ちの中間的な性質を持ち、やや内股に足を踏み込んで構えます。半円を描くように足を踏み出すことが由来で、内腿の緊張と丹田の力を意識する深い内功的な立ち方です。足幅は前屈立ちよりやや狭く、体重は5:5から前足6:後ろ足4の分配です。
ポイント
- 半円を描くように前足を踏み込む
- 両足をやや内股(内絞り)にする
- 膝を内側に向かって締める意識
- 内腿の筋肉を緊張させ重心を安定させる
- 体重は均等または前足6:後ろ足4
- 呼吸法(息吹)と連動する深い立ち方
12の立ち方 一覧表
| # | 立ち方 | 英語表記 | 重心配分 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 01 | 結び立ち | Musubi-dachi | 5:5 | 礼法・開始 |
| 02 | 平行立ち | Heikō-dachi | 5:5 | 準備・移行 |
| 03 | 八字立ち | Hachiji-dachi | 5:5 | 自然体・型の開始 |
| 04 | 内八字立ち | Uchi-hachiji-dachi | 5:5 | 型・準備動作 |
| 05 | 前屈立ち | Zenkutsu-dachi | 前7:後3 | 攻撃・基本稽古 |
| 06 | 後屈立ち | Kōkutsu-dachi | 前3:後7 | 防御・受け技 |
| 07 | 騎馬立ち | Kiba-dachi | 5:5 | 横技・鍛錬 |
| 08 | 猫足立ち | Neko-ashi-dachi | 前1:後9 | 防御・移行 |
| 09 | 鶴足立ち | Tsuru-ashi-dachi | 片足10:0 | 型・バランス |
| 10 | 交叉立ち | Kōsa-dachi | 移行形 | 方向転換 |
| 11 | 四股立ち | Shiko-dachi | 5:5 | 型・下半身強化 |
| 12 | 半月立ち | Hangetsu-dachi | 前6:後4 | 型・内功稽古 |
「空手に先手なし」
正しい構えに、すべての技は宿る。
― 船越 義珍(松涛館流の祖)の精神より



